平成24年5月29日~6月3日 活動場所:岩手県上閉伊郡大槌町 【高田裕之】


なぜ、大槌町なのか?
東日本大震災から1年3カ月が過ぎました。大阪ではもうあまり東日本のことが報道されなくなり、私たちの意識からも消えつつの感があります。震災当初は、ガーデンエルロイ創設2年目ということで、施設をあげて救援活動を行うことままならず、法人本部を通じて、救援復興のための募金を行うことがやっとでした。
それでも職員の中には是非とも現地に入り、現地の痛みを全身に感じて、少しでも役に立ちたいと志願する者があり、6名の職員が昨年4月から6月にかけて、大阪府、堺市、東大阪市から出されるボランティアバスによって、1週間程度、現地に入り救援活動を行いました。エルロイとしては彼らの活動を少しでも応援したいと出張扱いで送り出しました。
 しかし、やがてボランティアバスも運行されなくなり、東日本の支援の具体的な手立てを見つけられない状況が続きました。そんな中、阪神淡路大震災の救援復興活動での戦友ともいえる神父さんと話す機会がありました。「エルロイの職員が関われるような東北での活動ないやろか」「そらこれからは定点活動やわ。大槌町が面白いと思うで、でも行くんやったら1週間単位やわ」との助言をいただきました。その助言がこの度ようやく実現する運びとなりました。
実施に当たっての目的と見通しは、以下の通りです。まず、同じ時代、同じ国に生きるものの当然の義務として、大きな被害にあった人々の復興の手助けを行いたいと考えます。
次に現場主義をとりたいと考えます。援助にはいろいろな方法がありますので、それぞれに合った方法を継続することが大切だと思います。しかし、機会が与えられるならば、直接現地に出向くことは非常に意義のあることだと感じます。マスコミ報道によって頭で知って理解していることと、直接自分の足で現地に立ち、自分の胸で空気を吸い、自分の目で見て、自分の体で感じることは、まったく違うように思います。実際、私はこの度、現地に立って言葉にならない内蔵の震えを感じました。そして、我に返ったときの、これが現実なのかという自分をはるかに圧倒する冷厳な事実との出会い、そして、その後にやって来た『何かできることをしたい』という止めどもなく溢れる思いを経験しました。やはり現地に行かなければと思います。
 そして、最後に、私たちの学びとして、人が人をどのように助けることが大切なのかを考えたいと思います。国際、国家、地域、集団、個人レベル、それぞれのレベルでの援助の在り方、原理原則は基本的には同じだと思います。それは援助を求める側の自立に焦点を当てた援助のあり様だといえます。援助が援助を求めている側の必要量よりも多ければ、自立よりも依存を生むかもしれません。援助が求めているものより少ない場合は、いつまでも自立できない状況を生むかもしれません。援助が求められるものと量的に、また、質的に満たされない場合は、援助する側は、援助を受ける側にただ寄り添い、ともに涙することしか、できないかもしれません。
このような援助の哲学は、乳児院ガーデンエル、児童養護施設ガーデンロイが目指している児童への援助のあり方と全く同じものだと思います。私たちガーデンエルロイは東日本の復興活動に携わることによって、私たちの日々の歩み、子どもたちをいかに援助していくのかを、振り返っていきたいと考えます。入所児童の置かれた厳しさを考えると仕事現場を離れる困難さもありますが、それは職員が協力し合って、できる限り細く長く続けたいと思います。
             2012.6.12ガーデンロイ施設長 高田裕之